LPレコード

我が家には東京新堀ギターアンサンブルのLPレコードが1枚あるが、そのレコードの解説で長谷川武久氏がギター・アンサンブルの魅力について書かれている。

「ギター・アンサンブルを初めて聴いたときの驚きと喜びを、どう表現したらいいのだろう。
(途中省略。)
明治以来続いてきた「聴く教養」から「弾く楽しみ」へと音楽に対する接し方が、より積極的な方向に変ってきたように思われる。そうした時期において我々日本人にとって擦弦楽器よりもっと身近なギターによるアンサンブルが普及するということは、合奏の喜びがより多くの人々に広まっていくという意味において、もっと高く評価され、もっと広く認識されるべきだと思う。

新堀寛己氏のギターアンサンブルの説明から一部を引用すると、

「ギターの右手のタッチ(奏法)には弾弦した指が次の弦によりかかって停止するアポヤンド奏法とそうでないアルアイレ奏法があることは知られている。もちろんアポヤンド奏法のほうが音量、音色の変化などを行うのに、はるかに優れているのはいうまでもない。しかし独走の場合だと大半が重音の為にこの最も優れている現代の奏法が充分に用いられないのである。今日の合奏法や編曲のポイントはここにあるのである。必ず単音による編曲及びひき方をとっているのである。すると過去には及びもつかなかった輝く大きな音が生まれ、聴衆に深い感動を与える芸術的音楽要素が次々に発生するのである。以前にこんなに単純な原理を実際の音で目覚めた時、私はこれからのギターの無限の可能性も同時に感じて身震いして感動したほどであった。」

新堀寛己/東京新堀ギター・アンサンブル ヴィヴァルディ/四季

FONC-5016 購入時の価格 ¥2,500
録音:1979年3月15、16日 入間市民会館
独奏:稲岡満男、伊藤均

ギターミュージック

1979年7月号より、新堀寛己氏解説「セゴビアトーンの秘密」

特集 「輝ける音セゴビアトーン<爪とタッチ>」で新堀寛己氏解説の図解入りの詳細な説明がなされている。

オシロスコープを使った実験結果も掲載されている本格的な特集。ギターの音をマイクに通し、オシロスコープに表示される波形をチェック。音叉などの雑音のない音はきれいなサインカーブ(正弦波)になる。 12名が実験に参加。 「細かいヤスリで磨くほど(雑音が少ないほど)正弦波に近づく。」 「同一環境の下で、合理化されたカリキュラムを消化するとタッチは近似し、音の波形も同一パターンになる。」 「爪の長さやタッチの角度、意識の差によって波形が微妙に変わる。」 などが示されている。

右上の図は「このような形に爪を削っていたのでは永久にセゴビアトーンは出せない。」と説明されている。当時の私はセゴビアトーンの魅力に気がついてなくて、この形に類似した爪の形も試行錯誤した記憶がある。

特集の一部を引用すると、

セゴビアトーンを言葉で表現すると、

艶のある美しい音、遠達性のある音(豊かなうなり音)、ザラッとした爪の音が混っていないような純粋な音と言える。 この秘密は、爪をできるだけ短くした指が弦に対して左ななめから深く当る。次に、指頭の肉が弦を回転させる(ころがす)わけだ。 従来のタッチでは弦は左右の反復運動をするだけだったが、弦を自転させる力が加えられたことにより、自転しながら軌道上を公転する惑星のように、自転しながら左右に揺れるという動きになるのである。

左右振動に回転反復を加えたエネルギーは強大で、表面板の振動も倍加する。従ってうなりが生じ、空気を押して音の波が発生し、前へ前へと押し出される。遠達性のある音というのは、この音の波を津波運動の如く後から後から押し続ける性質の音なので、より長時間遠くまで音が鳴り渡るということになる。

絶対忘れてならないのは、
セゴビアのタッチは指が弦に触れる瞬間、体内からのエネルギーが稲妻の如く指先に走る、ということである。

蛇足ながら、セゴビアトーンが万能だと考える考え方を私はとらない。セゴビアトーンのタッチは深いので速いパッセージの場合にやや難があるためである。しかし、あのゾクッとするようなセゴビアトーンを持っていることは最大の強みとなる。演奏の一部分と言えども、セゴビアトーンが中心だとそれだけで魅力的な演奏になるからである。従って、セゴビアトーンをベースにして、何種類もの音を使い分けられることが現代の最高の奏法だと考えるのである。逆にセゴビアトーンを知らないで音づくりをすることは最大の損である。

何故セゴビアトーンを学ぶのか。

それは、セゴビアトーンを出さんとすれば、姿勢もタッチも合理的に改良されるからであり、こうして身についたものは、毎日の学習を積み重ねることが可能で、事実、私の教育生活の中でも、そうして育った生徒というのは、最も寿命の長い音楽家となって今日、隠れた新しい記録を更新中なのである。

以上、新堀寛己氏の解説より引用。

ネット上には「セゴビア奏法とセゴビアトーンの研究」というページもある。

セゴビア・トーンと言われても聴いたことがない人は文書だけではピンと来ないと思うのでサンプル音声を次に示す。ついでにイエペス・トーン(とは普通言わないが)も示す。

セゴビア、イエペス、ともに1980年の来日時にコンサートホールでの生演奏(マイクを使わない演奏)を聴いたので、そのときの演奏に近いと思える音声を選んだつもりだが、私が思った通りの音で再生できるとは限らないのがネット+パソコン音声の恐いところである。生視聴だとコンサートホール内の聴く位置によっても音の伝わり方が変わってくる。低音弦の音が鼻歌のように繋がって聴こえて大きな感動を受けたこともあるが、こういうのは演奏技術とホールとの兼ね合いによるものである。

私の場合、セゴビアの生演奏を聴いてはじめてセゴビア・トーンに心から魅了されたのだが、アポヤンド(隣の弦で指を止めるほどに音量重視の奏法、あるいは、音量重視だが隣の弦に触れる直前で止める奏法)、アルアイレ、親指だけの和音、アルペジオ風の和音、フレット側に近い部分で弾弦する柔らかい音、遠い部分で弾弦する固い音、などなど、それぞれにセゴビア・トーン(イエペス・トーン)が存在している。セゴビア・トーンにはパソコンやAVアンプなどで使われている効果音技術によって再現できるような要素も含まれている。現代のオーディオ技術によって音が汚くてもある程度美しく聞こえるように音を付加できるようになったことは素晴らしいと言えるが、それだけならセゴビアトーンは機械で実現できるということになるが、それだけではない要素も多い。今は音声がデジタル化されているわけで厳密に言うと全ての要素が機械で創造できるはずではあるが、爪の形や磨き方や弾弦方法は人の数だけあり、人が一生懸命努力して技術を極めることに意義がある。

35年前、面識がないのにしつこい私を家に招き入れて、
「イエペスの特殊アポヤンド奏法はこうやってこう弾くんだ。」
と目の前で実演して下さった武田四郎先生の生前の演奏をYouTubeで発見した。生演奏に含まれていてレコードには記録されていないセゴビア・トーンの要素が記録されているので紹介する。いわゆる会場音である。ビデオカメラの位置(マイク)で音声を拾ったものと思う。

イエペスのビラ・ロボス/練習曲第1番も現在YouTubeで映像付きで紹介されているが、マイクが近すぎて演奏時の指の接触音が含まれている。厚木で聴いた生演奏ではほとんど聞こえなかったノイズである。演奏技術と、演奏および聴く環境の違いの重要性を再認識した。オーディオ機器で効果音を付加してもノイズは消えないので、用途に合わせた演奏技術、用途に合わせた録音技術というものが存在しているようだ。

プログラムガイド

保存版専門誌「ザ・ギターオーケストラ」VOL.3

購入時の価格 ¥1,000
日独国際親善プログラム特集号1999
保存版専門誌「ザ・ギターオーケストラ」VOL.3

YouTubeより

吉備の国(ギター合奏と和太鼓の為の吉備の国より)

YouTubeにアップされている説明より、
演奏 岡山新堀ギターオーケストラ 指揮 中谷貞夫
オリジナル曲 豊かな吉備の国を描いた曲でフィナーレでは和太鼓とギターのボディーを叩いた音で祭りを表現しています。

ギター独奏とギターオーケストラの為のアルハンブラ宮殿の想い出

YouTubeにアップされている説明より、
ソロ:高木真介 指揮:中谷貞夫 岡山新堀ギターオーケストラ
2008年7月24日 第2回スペイン公演

アルベニス/セビリア

YouTubeにアップされている説明より、
岡山新堀ギターアンサンブル
新堀ギターキャンドルコンサート 2009年12月13日(日)三木記念ホール

ディベルティメント137Ⅱ.(モーツアルト)

YouTubeにアップされている説明より、
演奏:トゥインクル
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